
鳥筆Relation
つながりをテーマにした全50点の現代書作品シリーズ
本作《鳥筆Relation》は、オンラインで毎月5点ずつ発表された全50点の連続作品である。2022年には大阪のTSUBASA KIMURA Museumにて展示され、長年支えてくれたオーナーへの感謝と祈りを込めた最後の展覧会となった。
【会場写真】

本展は、2021年8月よりオンラインにて開催された、全10回にわたる連続展《鳥筆Relation》である。各回において毎月5点ずつの新作を発表し、最終的に全50点の作品が制作された。
世界がパンデミックにより分断され、人と人とのつながりが希薄となった時代背景の中で、「つながり」という主題が本シリーズの根幹に据えられた。
掲載の写真は、その最終回において、これまでに発表された全50作品を一堂に会して公開した際の記録である。
TSUBASA KIMURA Museum(大阪),2022


各回の展示の様子
【鳥筆作品制作について】
書のはじまりにあるもの
書において最も本質的であるはずの「道具」。しかし、「なぜこの筆を使うのか」「どのような表現を支えているのか」といった問いは、これまでほとんど語られてこなかった。鳥の羽根から自らの手で作られる「鳥筆」は、その問いに真正面から向き合う試みである。筆そのものを表現の主役として据え、その特異な性質とともに、書の原点に立ち返る道を探っている。


誰が書くのか
「文字」という人類の叡智を宿したモチーフと、それを支える長い歴史の中で磨 かれてきた道具に導かれて書く。そこから必然的に、「なぜ書くのか」「なぜ〈書〉である必要があるのか」という根源的な問いが立ち上がる。
もし文字を書かず、書法も用いないのであれば、それはもはや「書」ではない。他に自由な表現手段はいくらでも存在する。ゆえに、〈書〉を選ぶ理由を問うことから始めなければならない。
書とは何か
書には、脈々と受け継がれてきた「書法」が存在する。それは単なる技法ではなく、形や筆致、構成の中に蓄積された膨大な知識と美意識の体系である。古典や書論には、先人たちが見出した無数の「答え」が記されており、それらを知ることで初めて、書という営みは成立する。
書を書くことは、この前提を受け入れ、敬意をもって向き合う営為にほかならない。


答えのない表現へ
伝統的な書には、多くの古典や書論が存在し、それぞれに答えが示されている。だが、その答えは書き手の背景や思想によって異なり、決して一つではない。さらに、「鳥筆の書」に至っては、そもそも古典も理論も存在しない。過去の手本もなく、比較対象もなく、正解も存在しない。
そのような何もない地平に立ち、一つの線を探る営みは、自由であると同時に、深い孤独を伴う場でもある。
書くことは、問うこと
答えのない筆を持ち、先の見えぬまま書き始める。
どこへ向かうのか、何を目指しているのか──それは書く行為の途上でしか立ち現れない。
鳥筆とともに問いを重ねることによって、線は輪郭を得て、意味を深めていく。

【作品分類】
└ 第1弾「風」

Mounted scroll – Paper size: 24 × 21 cm
申し訳ございません。動画は現在準備中です。順次公開してまいります。公開の際はInstagramにてお知らせいたしますので、ぜひご覧ください。


