小筆の使い始めで失敗しないために
- kimuratsubasa2
- 2月2日
- 読了時間: 4分
― 外側に腰毛があるタイプの小筆の場合 ―
小筆を初めて使うとき、「まず全て下ろしてから使うもの」と考える人は少なくありません。その結果、水につけて下ろそうとしたり、いきなり墨につけて使い始めてしまったりすることがあります。
しかし、外側に腰毛があるタイプの小筆において、その扱い方は筆を傷める原因になります。しかも実は、書道で使われている小筆の多くは、この「外側に腰毛があるタイプ」なのです。
この記事では、小筆の使い始めで起こりやすい勘違いと、外側に腰毛がある小筆を安全に使い始めるための基本を、構造から整理します。
この記事で扱う「小筆」について
ここで説明する内容は、外側に腰毛(こしげ)があるタイプの小筆を対象としています。
大筆のように、腰毛が内側にセットされている筆
腰毛のない水筆タイプ(画筆)
これらは構造も使い方も異なり、この記事の注意点は当てはまりません。

まず結論:外側に腰毛がある小筆は、全部を下ろさない
外側に腰毛があるタイプの小筆は、使い始めに筆全体を下ろす前提で作られていません。
新品の小筆の穂先は、筆づくりの最終工程で、天然の糊によって丁寧に整えられています。
この糊は、穂先の形を保ち、線を安定させるために必要な構造の一部です。
ここに水や墨が一気に入り、筆全体が下ろされてしまうと、糊が根元から溶け、毛が広がりやすくなります。
一度開いた穂先は、元の形に戻りにくくなります。
なぜ間違えやすいのか
― 「下ろして使う」という前提のズレ ―
小筆の使い始めで、なぜ失敗が起こるのかー。
多くの初心者は、最初に固められている筆をどう扱えばよいのかを知りません。
そのため、
水につけて下ろそうとする人
いきなり墨につけて使い始めてしまう人
どちらもいます。
共通しているのは、「筆は全て下ろしてから使うもの」という感覚です。
しかし、この感覚は、外側に腰毛があるタイプの小筆の構造とは合っていません。
小筆と他の筆との混同
ここで混同が起きやすい理由があります。
書で使う小筆の多くは、外側に腰毛があるタイプ
一方で、
画筆は、ほぼ腰毛のない水筆タイプ
大筆は、全体を下ろして使うのが原則。(大筆は、腰毛が内側に入っている場合も多いですが、その場合でも全て下ろして使います。)
これまでの図工や絵筆の経験、あるいは大筆の扱い方の感覚があると、
「筆=全部下ろしてよい」
と判断してしまいがちです。
この前提のズレが、小筆の使い始めで失敗が起きやすい一番の理由です。
これは、始めたばかりの人だけでなく、経験のある人や、プロであっても、意外と気づかないことがあります。
正しいおろし方
― 穂先の三分の一だけを動かす ―
外側に腰毛があるタイプの小筆の正しい使い始め方は、とてもシンプルです。
濡らしたティッシュを用意する
穂先の三分の一だけを、やさしく拭う
筆全体ではなく、先端だけを「少し目覚めさせる」ように扱う
ポイントは、筆全体を動かさないこと。
穂先の動きが確認できれば、それで十分です。
このひと手間で、筆の寿命も、線の安定感も、大きく変わります。
NG例について
このテーマの動画では、使い古した筆を使って、あえてNG例を撮影しています。
新品の小筆では、同じことを試さないでください。
小筆の使い始め:糊は「落とすもの」ではない
新品の小筆についている糊は、最初にすべて落とすものではありません。
穂先の形を守り、線を整えるために必要な構造です。
使い始めにどう扱うかで、その筆が持つ本来の性能を引き出せるかどうかが決まります。
まとめ:構造に合った使い始めを知る
筆は、ただの道具ではありません。筆の状態は、そのまま線に表れます。
外側に腰毛があるタイプの小筆は、「全部を下ろして使う筆」ではありません。
まずは、構造に合った使い始めを知ること。
それが、小筆と長く付き合うための第一歩です。
次回予告
次回は、外側に腰毛があるタイプの小筆の構造と、扱い方の基本を整理します。なぜ扱い方が水筆タイプや大筆と違うのかを、もう一段深く見ていきます。
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